金融機関犯罪被害者の会
金融機関の犯罪を、防ぎ、巨悪を排除すべく、使命感を持ち、任務に当たる。






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事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,2250万6200円及びこれに対する平成3年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員と弁護士費用を支払え。
第2 事案の概要
本件は,破産した株式会社の代表取締役であった原告が,金沢税務署の職員が同社の法人税申告の問題点を指摘しなかったため、同社が過大な税金を支払わされたとして,国に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,平成2年2月期(平成元年3月1日から平成2年2月28日までの事業年度)に同社が納税した法人税額2250万6200円及びこれに対する平成3年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実等(争いがない事実,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。)
(1) 原告は,株式会社レディー・バード(以下「本件法人」という。)の元代表取締役であり,同社は平成8年8月に事実上到産した(争いがない)。
本件法人は,平成8年10月24日午後2時に当庁から破産宣告を受け,平成11年4月に異時廃止となった(甲18)。
(2) 原告及びその妻である高木清子は,本件法人が倒産したのは本件法人の顧問税理士石瀬保彦(以下「石瀬税理士」という。)の漫然とした経理処理(約2億3608万円の仕入計上漏れ)に起因しているとして,平成13年に同税理土を被告として別件訴訟を当庁に提起したところ,当庁は,平成17年3月25日付けで石瀬税理士の過失を一部認める判決をし,同判決は確定した(甲18)。
(3) 原告は,平成26年4月24日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。
(4) 被告は,平成26年6月16日の第1回口頭弁論期日において,原告の国家賠償請求について,消滅時効の援用の意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。
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2 本件の争点及び争点に対する当事者の主張の要旨
(1) 金沢税務署職員の行為の違法性
(原告)
ア 石瀬税理士が,本件法人の経理処理において,平成元年における仕入れ額を1億1742万8502円,平成2年における仕入額を1億1865万1133円の合計2億3607万9635円を計上すべきところ,不注意によりそれらを計上しなかった。 同人は,その過失を平成3年10月に発見し,平成4年2月期決算書において仕入れ計上漏れ2億3607万9635円を資産「貯蔵品」で計上した。これにより,売上原価が加算され,突如2億5350万3904円という巨額の欠損金が計上された。そのため,同年夏ころから金沢信用金庫の貸し渋り,資金回収が始まり,そのころから本件法人は事業債務の返済に窮するようになり,さらには運転資金の調達難に伴い、仕入れに事欠くことになり,平成8年8月26日に倒産に至った。
原告は,平成12年7月31日に金沢税務署に出向いて決算書を閲覧し,筆記で写しを取っていたところ,決算書の「雑損失」欄に赤鉛筆で丸印が付されていることを発見した。
イ 石瀬税甥士が上記過失に対して「更正の請求」を行い,金沢税務署職員(金沢税務署長も含む。以下同様。)が上記赤鉛筆で丸印を付けた問題発見時点で本件法人の代表取締役である原告に対してその旨指摘していれば,本件法人は倒産することはなかった。石瀬税理士は元金沢税務署長であるため,納税額を公正にただすようにはせず,過大なる徴税が主眼で業務に当たっているとしか考えられず.同じく金沢税務署長もそれに加担していたことは逃れられない事実である。
本件法人は,平成2年2月期に法人所得税として,2億2506万6200円を納税しているところ,本来ならば課税されない法人所得税である。
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したがって,国は本件法人税を原告に対して返還すべきである。なお,本件法人の法人格がないことを理由として返還を拒むことは不合理であり,法人の元代表者である原告に返還すべきである。
(被告)
ア 原告は,国に対して同賠法1条1項に基づく損害賠償請求権を有していない。
本件法人税は,本件法人が納税した税金であるから,仮に本件法人税が損害に当たるとしても,かかる損害は,本件法人が被った損害であり,原告が被った損害ではない。また,法人が過大な納税をした場合に,その代表者が損害賠償請求することができるという原告主張は独自の見解である。
イ 金沢税務署長には国賠法上の違法と評価される行為が存在しないこと
本件法人が申告した申告書は,本件法人が申告納税制度にのっとり,自主的に金沢税務署長に提出した申告書であるところ,その申告内容について,計算誤りがあるとか,金額の移記誤りであるとか,その納税申告書に記載されている課税標準等又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていないことが明らかである場合を除き,金沢税務署長が本件法人の代表者である原告に対し,何らかの指摘をしなければならない法令上の義務は存在しない。
原告が提出する甲第3号証が金沢税務署が保管していた本件法人の申告書等であるかどうか自体疑わしいところ,この点を措くとしても,平成7年2月期の本件法人の申告書の内容に上記明白な誤りは認められない。
したがって,原告に対して何らかの指摘をしなかったことは,「権限の不行使が許容される限度を逸脱して,著しく合理性を欠くと認められるとき」に該当せず,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情はないから,国賠法上の違法行為と評価されるものではない。
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(2) 消滅時効
(被告)
仮に原告主張の損害賠償請求権が存存するとしても,原告は,平成12年7月に金沢税務署で本件法人の平成7年2月期分の申告書を閲覧し,申告書の「雑損失」欄に赤鉛筆で丸印が付けられていることを発見したとして,そのことをもとに本件請求をしていることからすれば,原告は遅くとも平成12年7月には,原告が主張するところの金沢税務署長の本件法人に対する不法行為による「損害及び加害者を知った」というべきである。そうすると,国賠法4条及び民法724条の規定により,遅くとも同日から3年を経過した平成15年8月ころには本件損害賠償請求権は,時効により消滅した。
(原告)
争う。
第3 当裁判所の判断
1 国賠法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決民集39巻7号1512頁)。
そLて,国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決・民集43巻10号1169頁,最高裁平成7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁,最高裁平成16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁参照)。
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これを本件について検討するに,原告は,金沢税務署の職員が平成7年2月期の申告書の「雑損失」欄に赤鉛筆で丸印を付けた時点で問題点を発見していたのであるから,本件法人の代表取締役である原告に対して石瀬税理士の誤りを指摘すべきであったと主張するが,原告の主張によっても,金沢税務署の職員が本件法人の代表者である原告に対していかなる権限において,本件法人の申告内容にどのような指摘をすべきであったのか明らかにされておらず,また,原告が提出する甲第3号証を含む本件全証拠を総合しても,金沢税務署の職員が本件法人の所得税の申告に関し,何らかの権限を行使しなければならなかった事情や,何らの指摘もしなかったことが,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる事情は認定できない。
以上によれば,金沢税務署の職員に国賠法上違法な行為は認められない。
2 上記点を措くとしても,原告が損害と主張するのは,本件法人が平成2年2月期の所得税として支払った金額であるところ,係る所得税は本件法人が支払ったものであり,原告個人が負担したものではないから,原告個人の損害であると認めることはできない。また,原告は本件訴訟の代理を弁護士に委任しておらず,弁護士費用は発生していない。
よって,この点においても原告の主張は認められない。
以上iこよれば,原告の請求は,その余の争点(消滅時効)について判断するまでもなく理由がないから,主文のとおり判決する。
金沢地方裁判所民事部
裁判官 峯金容子
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これは正本である。
平成26年10月6日
金沢地方裁判所民事部
裁判所書記官 稲口絵美